イジワルな恋人



「今日会ったの……、偶然じゃないんだ」

「……え?」


先輩が小さく笑みをこぼす。


「家に会いに行ったらバイトに行ったって聞いたから、待ってたんだ」

「……」


……さっきから不思議に思ってた。

先輩の家は、自転車ならここから30分はかかる。

それなのに、なんでこんな場所に自転車なんかでいるんだろうって、不思議に感じてた。


それが、あたしに会うためだったなんて……。

あたしに会うために、わざわざ自転車を走らせて来てくれた事を思うと、その想いに、まだ落ち着かない胸が痛んだ。


「……水谷の気持ちが聞きたくて会いにきた。

前、気持ち伝えてから少しは考えてくれた?」


中澤先輩の顔が……、三年前と同じに見えた。


……あたしが、好きだった中澤先輩に。


先輩の真っ直ぐな眼差しが、まるで突き刺さるみたいに胸を締め付ける。


……先輩は、ずっと憧れてた人。


優しくて、思いやりがあって……、

あたしに会うために、わざわざ自転車で来てくれて。



……一緒にいたら、きっと幸せだと思う。


今感じてるような不安だって、

先輩だったらきっとすぐに気付いて優しい言葉をかけてくれる。