イジワルな恋人



「つきまとうだって。怖い事言わないでよ。大体、付き合ってるだけで亮くんは水谷さんのモンになるわけでもないでしょ? 

ただ単にタイプだから落としたいだけ。

……そういえばこないださぁ、次バイト一緒になったらキスしてくれるって約束したのに、なかなか一緒にならなくてさぁ……」


キス、って……?


「……亮がそう言ったの?」

「ん? あたしからだけど……。でも亮くんもその気でいると思うけど?」

「……っ」


そう言って微笑む佐伯さんから、目を逸らす。


……きっと、佐伯さんが勝手に言ってるだけだ。

絶対に……、そうに決まってる。

真に受けちゃだめ。


必死に言い聞かせるのに……。

心臓だけが言うことを聞かないで騒ぎ続ける。

ドクドク振動する心臓が、あたしの不安を掻き立ててるみたいだった。



亮は……、あたしを裏切ったりしない。


……絶対に。



手に持ったオレンジジュースがやけに重たくて……落とさないようにぎゅっと抱き締めた。