「……わかりました。今から行きます」
本当はそんな気分じゃなかったけど、慌ててる香奈ちゃんの姿が浮かんで、少し心配になった。
「北村さん、申し訳ないんですけどバイト先に行ってもらえますか?
……呼び出されちゃったんで」
「かしこまりました」
ケータイを鞄に戻そうとしたあたしの目に、亮にもらった林檎うさぎが映った。
亮とおそろいの林檎うさぎと、ケータイ……。
あたしは、林檎うさぎを手にとってぎゅっと握りしめた。
優しく微笑みかけるような林檎うさぎの表情が……
あたしの気持ちを余計に悲しくさせた。
店内は思った通り賑わっていて、想像通り香奈ちゃんが少しパニック状態だった。
混んでいた事に加えて、人数も足りなかったせいか、さすがの佐伯さんも文句を言いながらもきちんと働いていた。
あたしがバイトに入って一時間くらい経ったところで、やっとお客さんの波が途絶えて、店内を平穏な空気が流れる。
「あー、疲れましたー」
香奈ちゃんが受付のカウンターに突っ伏す。
目を閉じた香奈ちゃんは、そのまま寝ちゃうんじゃないかって心配になるほど疲れた表情を浮かべていた。



