イジワルな恋人



「だって……今日は、何もしないって、」


戸惑いながら言うと、亮がふっと笑みをこぼす。


「何もしないつもりだったけど……おまえが悪いんだろ?

おまえが、俺に隠し事なんかするから」


『隠し事』

亮の口から出た言葉が……、あたしの心に不安を思い出させる。


ずっと、心の片隅に潜んでいた不安を。



「……隠し事があるのは亮のほうでしょ?」


その言葉を聞いて、亮の手が止まった。

さっきまでの意地悪な顔じゃなくて、真剣な顔をしてあたしを見つめる。


「……おまえ、」

「佐伯さんと何かあったくせにっ……。あたしに隠してるじゃないっ」

「……」


目を逸らして何も言わない亮を見て、無性に悲しくなって……。


あたしは自分の鞄を持つと、部屋を飛び出した。


……なんで? 

なんで何も言わないの?



あたしに……、言えないような事なの……?