イジワルな恋人



「……男の部屋なんかに簡単にきちゃっていいと思ってんの?」


甘く低い声が、耳元でささやかれて……あたしは赤くなった顔をうつむかせた。


「だって、亮が来いって……それに、今日はキスマーク以上はしないって昼休みに言ってたし……。っ、だめだってば!」


不意に耳にキスをされて、亮の腕の中でもがく。


「亮っ……」

「……うるせぇな。ちょっとからかっただけだろ」


楽しそうに笑う亮が、腕を緩める。


「あ……」


そんな亮の行動に、思わず飛び出した言葉に口を押さえた。


……なんで?

なに? この気持ち……。


あたし、何か期待してた……?


ほっと安心した反面……、少し残念なような不思議な感情があたしの胸を締め付けていて……

それに動揺が隠せない。



うそ……。

絶対うそっ!


こんなの、うそだ……。


大体、期待って……何を? 


キス以上の、事―――……?



「あった」


亮が棚の中から香水を取り出す。

その声に、顔を上げる。


……確かに亮とは恋人同士なんだし。

そうなるのも自然……かもしれないけど。だけど……っ。