イジワルな恋人



「……」


何? この大きさ……。


「早く入れよ」


何かの施設を連想させるほど大きいその建物の玄関から、亮が呼んでる。

あたしは恐る恐る近づいた。


「ここ……玄関?」


『玄関』なんて言葉の似合わない立派なドアを、亮が閉める。


「他に何に見えんだよ」


スタスタと歩く亮の後ろを緊張しながらついて行くと、二階、一番奥の部屋の前で止まる。


「ここが亮の部屋……?」


開けられたドアに中に入ると……部屋は20畳くらいのフローリングで、家具は白黒のモノトーンでそろえられていた。


「……なんか亮っぽいね」


必要最低限の家具に、大きな液晶テレビ。

黒いテーブルの上には、ノートパソコンが置いてあった。


……なんか生活感が全くないな。


ベットもキレイに直されてて、ちっとも散らかってなくて……。


本当にこの部屋で亮が過ごしているのか疑問が残るほど、そこはキレイ片付けられていた。


「ねぇ、亮、普段本当にここで……亮?」


急に後ろから抱き締められて、戸惑って亮の名前を呼ぶ。

吐息が肩にあたって……、身体が勝手にすくむ。