イジワルな恋人



【奈緒SIDE】


あたし、なんて事してたんだろ……。


『……嫌か?』

そう言った時の、亮の真剣な顔が頭から離れない。


反則だよ、あんな顔……。

亮を好きになってから、胸が苦しい事ばかりで困る。


人を好きになるのって、こんなに苦しいんだ……。


嬉しくても、

寂しくても、

悲しくても、

切なくても。


同じ場所が苦しくなる。


……痛くなる。


いつの間にか、亮があたしの心の真ん中に居座って……、離れない。


あたしの中が、亮だらけで……

好きって気持ちが大きすぎて、他の事を考える余裕がない。


まだ騒がしい胸を押さえながら、赤くなった顔を両手で隠した。




「先輩? どうしたんですか? にやけてますけど……」


香奈ちゃんの言葉に、顔を両手で覆ったまま目を逸らす。


「な、なんでもないよ。あ、香奈ちゃん次休憩入って」

「はーい。先輩、さっき佐伯さん店長に呼び出されて注意されてましたよ! 

お客様がいる前で桜木さんにベタベタしてたから。なんかちょっとすっきりしました!」


嬉しそうに笑いながら話す香奈ちゃんに、あいまいな笑みを返す。