イジワルな恋人



「ねぇー、香水いつ一緒に買いに行ってくれるのぉ?」

「っていうか、亮くん、全然バイト来てくれないんだもぉん。寂しかったよ」

「そうだっ! 亮くんのケータイ教えてよぉ」


……『亮くん』?!

気にしないと心に決めたハズなのに。

ドリンク補充をしながらも、全神経が2人の会話に集中していた。


「佐伯さん、ちょっとうっとうしいですよね」


急に話しかけられて、二人の会話に集中していたあたしは、びっくりして補充していた氷を落とす。

キレイな四角の氷が、床にきらきら光りながら散らばった。


「……あ、ごめんね」


しゃがんで慌てて氷を拾う。


「あ、あたしが話しかけたせいですか?! ごめんなさい、手伝いますよ!」


そう言って氷を拾い始めたのは、同じ歳の石田 香奈だった。

最近入ったばかりの子で、慣れるまであたしが仕事を教える事になっている子。

佐伯さんとは違って、少し人見知りで、優しい子。


最近では、言いたいことも、あたしになら少しは話すようになってくれて、少しずつ打ち解けてくれてるのを嬉しく感じていた。



「佐伯さん、絶対桜木さんの事狙ってますよね」


香奈ちゃんの言葉に、氷を握ったままの手が止まる。


「こないだも店頭にいかつい男が来て、佐伯さん呼んでもめてたんですよ? 

店長もやめさせればいいのに……」


……またそんな事があったのか、なんて呆れながらため息をもらす。