「あ、奈緒ちゃん。
ちょうどお茶入れるところだよ。早く着替えておいで」
家に入ると、おばあちゃんがキッチンでお湯を沸かしていた。
「はぁい」
返事をしながら、自分の部屋に行って家着に着替える。
クローゼットのハンガーに制服をかけた時、一番端にかけてある中学の制服が目に入った。
……おばあちゃんは知ってるのかな。あたしが記憶無くした時の事。
なんとなく今日梓に話した時から、その事が気になっていて。
中学の制服が、あたしに何かを語りかけているような気がして。
しばらく制服を見つめていると、リビングからおばあちゃんの呼ぶ声が聞こえて、返事をしながらクローゼットを閉めた。
リビングに下りると、入れたてのお茶が湯気をたてていた。
ソファーに座ってお茶を眺めて……おばあちゃんに話を切り出す事にした。
「おばあちゃんは、あたしが記憶失ってる間の事知ってる?」
突然の問いかけだったからか、おばあちゃんは驚いた表情を浮かべて……。
少し黙ってから話し出す。
「おばあちゃんも一緒に住んでたわけじゃないから、詳しくは知らないけど……。
戸惑ってはいたけど、いつも通り過ごしてたみたいだよ。お母さんから電話もらったけど、元気だって言ってたし……」
おばあちゃんが記憶を辿るように話す。
その視線は真剣なもので、一点を見つめていた。



