イジワルな恋人




「へぇ……。そんな嫌な女がいるんだ」


朝のHRの後、昨日の佐伯さんの事を梓に話していた。


ざわめく教室の中でされる話題は、ほとんどが昨日の打ち上げの事。

あたし達が帰った後も、二時間くらいは続いていたらしくて、担任も少しうんざりした顔でHRを終えていた。


「今まではあまり気にならなかったんだけど……。

真面目に仕事してくれないかな、とかは思う事はあったけど、自分さえちゃんとやってればいいやって思ってたし。

でも……亮がいるとやっぱり気になる」


少し表情を曇らせたあたしを、梓がまじまじと見つめる。


「……なんか、まさか奈緒と恋バナできるなんて……。感激だなぁ……」


いかにも信じられないという表情を浮かべる梓に口を尖らせる。


「もぉ! 真剣に話してるのに」

「あぁ、ごめんごめん。

まぁ、気になるのは仕方ないよ。彼氏に手出されたら嫌だし、その可能性があるなら不安で当たり前だし。

だけど、桜木先輩はそんな女の誘いになんか絶対乗らないから安心しなよ」

「……うん」

「だって、桜木先輩って今までかなり遊びまくって、もう女なんてどうでもいいって感じじゃん。

それに、奈緒に会ってから硬派に変わったし。あ、見た目別にしてね。

今まで何十人って遊んだ桜木先輩の目には、そんな女は適わないって。ねっ!」

「……」


梓の言葉に、渋々頷く。


……亮を、信用してないわけじゃないんだ。


だだ……なんとなく、不安で。

もちろん亮にベタベタ触って欲しくないっていうのはすごくあるけど。



……独占欲、強いのかも。