イジワルな恋人



その日は、お客さんもあまりいなくて、いつもは進まない雑用がやけに進んた。


……でも。

あたしの冷たい視線が、亮と佐伯さんに止まる。


「やだぁ、そうじゃないよぉ。桜木くん、なんでそんな事も知らないのぉ?」


……そんなに楽しい? 

雑誌の入れ替え作業が?


佐伯さんいっつも面倒くさいって文句言ってるくせに……。


「もぉ。あ、ねぇ。ここ終わったらあたしと休憩しよっかぁ」


……どう聞いても仕事に聞こえないんですけどっ!


イライラする気持ちに、二人から目を離してため息をついた。

これからバイトの度にあれを見せつけられるかと思うと、嫌気がさす。

意識してないつもりなのに、苛立ちが募っていく。



『せっかく両思いになれたのに』

そんな事を考えて、もう一度ため息が出た。



『あんまり、触って欲しくない』

そんな思いに、表情が勝手に歪んでいく。


「……先輩? どうしたんすか? 眉間にシワがよってますけど」


突然聞こえた低い声に顔を上げると、カウンター越しに亮が立っていた。


「……これはっ、……別になんでもありません」


目を逸らしながら言う。


「……ふぅん?」


余裕のある亮が悔しくて……、あたしも一生懸命に冷静を装う。