佐伯さんのバイトでの態度は最悪だから。


接客態度は悪いし、好みのお客さんには仕事中だとか関係なく積極的に近づいてくから、お客さんと何度も恋愛がらみのトラブルを起こしてる。


惚れっぽくて飽きっぽい。わがままで奔放。

聞こえはいいかもしれないけど、佐伯さんは度が過ぎる。


バイト先の人達も、みんな佐伯さんとは一線置いて接していた。


「……はい。ちょっと学校の用事で」


あたしも、佐伯さんが苦手なうちの一人。


「ふぅん。まぁどうでもいいけどね。そういえばさっきね、すっごいカッコいい男が店長と事務室入ってったんだよねー。

誰だろぉ。新しいバイトかなぁ。だったら絶対狙っちゃうっ」


佐伯さんの言葉に、内心少し動揺したけど、冷静を装いながら口を開く。


「佐伯さん、バイト内で恋愛は禁止ですから」


だけど、佐伯さんはまったく気にしない様子で首を傾げる。


「んー、バレなきゃいいんじゃん? まぁ、バレたらバレたで辞めればいいし?」


……もぉ。亮が気まぐれにバイトしたいなんて言い出すから。


『バイト内恋愛禁止』

そんな決まりに安心していたけど……、甘かったかもしれない。


目の前で浮かれる佐伯さんに、胸騒ぎが止まらなかった。