「昨日の報告終わりました。

やっぱりキャバクラのあの男店員から学校に苦情があったそうです。

学校側にはうまく話をつけましたので、後で店長にも私から注意を……」

「北村!」


桜木先輩の声に、あたしの存在に気付いた北村さんはぴたりと話を止めた。


「キャバクラって、あたしの後を追って……? 

その、キズ……」


あたしのせいで……?


「別におまえのためとかじゃねぇから勘違いするなよ?

……あの男がむかついたから殴っただけだし」

「あっ、ちょっと……っ」


目を合わせないでそれだけ言った後、桜木先輩はスタスタと校舎に向かって歩き出す。

あたしは北村さんに会釈だけした後、桜木先輩の後を追った。


「ねぇ、待ってよ!」


少し息を切らしながら桜木先輩の隣に並ぶ。

桜木先輩は、歩くスピードを緩めて、あたしに視線を落とした。


「なんで追いかけてきたの?」


だけどぶつかった視線は、あたしの問いかけが終わると同時に逸らされる。


「……あんなバイト、学校にバレたら退学だろぉが。

……気になったんだよ。なんでだか知らねぇけど」