「……ありがとう。梓。
その事で……、相談に乗ってもらってもいい……?」
あたしの言葉を聞いて、梓の表情が不安から驚きに変わって、そして。
笑顔を浮かべた梓に勢いよく抱きつかれる。
「もちろんだよっ! ……ありがとうっ。
奈緒からあたしを頼ってくれるなんて、……もーっ、夢みたい!」
大げさな言葉に、思わず笑顔がこぼれた。
ありがとう……、梓。
梓のふわふわの髪から香る甘い香りに……、目を閉じた。
「そっかぁ……。中澤先輩、まだ奈緒の事好きだったんだ……」
屋上に続く階段。
毎日屋上に足を運んでいるうちに、この階段は人通りが少ない事に気が付いた。
……多分、その先にいる亮の存在が人を寄せ付けないんだろうけど。
「うん……。あたし、全然気付かなくて。だけどずっと想っててくれたなら、裏切れないよ……」
つくづく、あたしは今まで自分の事しか見えていなかった事に気付かされる。
誰にも迷惑かけてないつもりだったのに……。
あたしの独りよがりな強がりは、本当は色々な人に気を使わせていたんだ。
先輩にも、梓にも、おばあちゃんにも……亮にも。
「だけど……、奈緒は桜木先輩が好きなんでしょ?」
梓の言葉に、あたしは少し黙ってから深く頷いた。
今も、この階段を登った屋上に亮がいるかと思うだけで、胸が締め付けられる。
苦しくなる……。



