イジワルな恋人



「……なんかあった?」


突然の問いかけにびっくりして真ちゃんを見上げる。

真ちゃんは、そんなあたしを見て笑った。


「やっぱりな。……なんでわかったか不思議なんだろ」

「……うん」

「健がさ、考え事とか悩み事があると、朝走ってたから……。やっぱ兄妹だな」


真ちゃんが笑顔を浮かべたまま話す。

そういえば健兄……、たまに朝走りに行ってたけど、そういう意味で走ってたのか……。


一緒にいた時間があまりに短くて……、あたしは、家族の事、あまり分かってなかったのかもしれない……。


もっともっと……、話したかったな……。


「で? 何があった?」


優しい顔をする真ちゃんの言葉に、少し躊躇してから話を切り出した。


中澤先輩の事を聞いた真ちゃんが、空を見上げながら呟く。


「そっかぁ……中澤がねー」


真ちゃんの視線に気付いて横を見ると、目が合った真ちゃんは微笑みながら言う。


「……なんで、桜木が好きだって、俺に言わないの?」

「……っ」