イジワルな恋人



「……や、…っ」


苦しくて声を出すと、それに気付いた亮がやっと解放する。


「…なん…で……?」


赤くなった顔も隠せないまま、乱された呼吸を繰り返す。


「……おまえがあんまり可愛いこと言って目潤ませてたから。我慢の限界……」

「でもっ……」

「おまえ、俺の指令なんだか聞いてた?」


……亮の指令?


「……聞いてなかった」


山本さんとゴールしたのがあまりにショックで……。

ゴール後の解説なんか聞こえてなかった。


「……“巨乳”」


亮が笑いながら言った指令に、あたしは目を丸くした。


「巨乳?!」


あたしの大きな声が、誰もいない中庭に響いた。


「そ。たまたま一番前にいた女が胸でかかったから。

山本だっけ……? 名前なんか知らねぇけど」


……確かに、山本さんはクラス一番の巨乳で、男子にも噂されているのを知ってる。

あたしだったら、そんな事言われたら絶対嫌なのに、山本さんはそんな様子は全く見せなくて……。


むしろそれを自慢気にしていたから、その姿に感心すらしてた。

以前、梓が『山本さん、Fカップだって!』なんて騒いでた事が思い出される。


そういえば……さっきも憧れとか言ってた気がする……。