イジワルな恋人



横を向いたまま涙を溜めたあたしを見て、亮が深いため息をつく。

亮のため息に、気持ちが沈んでいく。


……もう、あたしなんかより山本さんがよくなったのかな。

そんな考えが浮かんで、落ち込む気持ちに拍車をかける。


でも……彼女でもないのに、

亮の気持ちに応えられなかったのに、こんなこと言われても……。


亮だって面倒臭いに決まってる。


「あの、ごめ……」

「―――奈緒、わりぃ」


謝ろうとして顔を上げた瞬間、亮の声が重なった。


そして、次の瞬間―――……。


亮の唇が、あたしの唇を塞いでいた。


……え? な、に……?


あまりに突然の出来事に、状況が飲み込めなかったけど……。

唇の隙間を割って入ってきた亮の舌に、身体がびくんと反応する。


「…、……んんっ…」


小さく抵抗してみるも、亮の腕に抱きすくめられていて動けない。


「…ん…っ、……」


以前されたキスよりも、長くて……深いキス。


頭の中がしびれるような……、


もう何も考えられなくさせるようなキス。