イジワルな恋人



【亮SIDE】


「どういうつもり? あたしに何か用?!」


勢いよく突っかかってきた女に、少し面食らって言葉を失う。

……こいつ見た目と違って攻撃的だな。


「別に。これからどっか行かねぇ? ……金ならあるし」


頬杖を付きながら相手の反応を観察する。

付け足した言葉への反応がどんなもんかを。


「行かない。急いでるからもう降りるけど、ついてこないで」


一瞬の迷いもなく断った女が、俺をあの強い眼差しで捕らえる。

あまりに真っ直ぐに見つめてくる女に、先に目を逸らしたのは俺だった。


「……じゃあ送ってやるよ。お前案内しろよ」


俺の言葉を聞いて、女は車を降りる事を諦めたのか、運転手の北村に道順を説明し始めた。

窓ガラスに映る女を眺めながら、既に狂わされたペースに気付いて表情を歪める。


らしくねぇな……つぅか、無理して落とす必要もねぇし、送る必要なんかもっとねぇのに。

いつもとは違って振り回されている自分に、無性にイライラして、窓の外を睨みつけた。


「ここです」


女の声に車が止まる。思ったより早く着いた場所に外を覗いて……。


「―――……!?」



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