イジワルな恋人



『お、赤チーム速い! 一着です。

しかし、指令に合わない人だったら失格ですからね。

……えー、指令は“背の低い男の子”。……これはOKでしょう!』


それを聞いた赤チームが一斉に盛り上がる。


「……確かに低いね、あの子。

ってか実況がうるさくて想像以上に注目されるね。絶対選ばれたくないし」

「でも桜木先輩が引いた紙が“彼女”とかだったら確実に選ばれるよ?

っていうか、桜木先輩におんぶしてもらえるなら、注目されるくらい全然いいのに」


隣でにやけながら話す梓の言葉に、自分をおんぶする亮の姿を浮かべてみる。


……あたしはやっぱり嫌だな。

一緒に走るならまだしもおんぶなんて……恥ずかしいし。


想像しただけで胸が苦しくなってきて、切ない想いがあたしを襲う。



……―――だからっ! 

違うっ……、のに……。



一人で勝手に赤くなった頬を、呆れて両手で覆った。



「あ、桜木先輩スタートしたよ!」


梓の声に顔を上げると、亮が紙を拾い上げたところだった。

亮の目がキョロっと動いて、青チームの応援席に向けられる。


走ってくる亮に、視線が釘付けになった。