イジワルな恋人



梓がペットボトルのウーロン茶を飲み干して答える。


「知らないんじゃない? 

なんかいつもは借り物で、小道具用意してたらしいけど、今年は間に合わなくて急遽変更になったって。

あたし100m最後のレースだったから、後ろで説明してるのが聞こえてさ」

「……」


……亮、知ってたら絶対でなかっただろうな。

しかもおんぶ……。


誰かをおんぶして走る亮の姿なんて想像もできなくて。

思わず苦笑いが零れる。


「あたし、選ばれたらどうしようっ! “好きな人”とかの指令で」


隣で梓がはしゃぐ姿を見て、あたしは笑って首を傾げる。


「梓、モテないわけじゃないのに。

こないだだって、隣のクラスの男子に誘われてなかった?」

「だって好きなタイプじゃないんだもん。あ、始まった!」


梓の声に、スタートしたレースに視線を移す。

第一レースの生徒が紙を拾い、当てはまる人を探しているところだった。