イジワルな恋人



「奈緒次だよ。頑張ってよね。

優勝したら先生達がピザおごってくれるらしいよ。

三学年合同で食堂で打ち上げやるらしいし、カッコいい先輩に近づけるチャンスなんだから!」

「……」


梓に呆れた笑顔を向けていると、スタートラインにつくように促された。


走るのは嫌いじゃなかった。

スタート合図の笛の音に、身が引き締まる。

スタートしちゃえば100mなんてあっという間で、風を感じながら先頭でゴールテープをきった。


息を整えながらチーム別の応援場所に戻ると、ちょうど梓が走ってくるところだった。

あたしの次のレースに出た梓は、元陸上部だけあって、ぶっちぎりで一着だったけど、本人はレース結果なんてどうでもいいみたいだった。


「……ね、次の……借り物競争、桜木先輩……でるみたい」


ゴールして、そのままの勢いであたしのところまで走ってきた梓の言葉は、途切れ途切れで聞き取りにくい。


「……だから?」


梓にペットボトルを差し出しながら聞く。


「なんかね……、借り物競争って言うのは名前だけで実は借り人競争なんだってっ!

レース途中に落ちてる紙に書いてあることに、当てはまる人をおんぶしてゴールするらしいよ」

「……それ、亮知ってるのかな?」