イジワルな恋人



【亮SIDE】


「……なんかおかしかったよな、あいつ」


奈緒の後ろ姿を見ながら言うと、武史が屈伸しながら返事を返す。


「亮がハチマキ巻いてくれなんて頼むからじゃない?

それまで普通だったじゃん」


……確かに。それまでは普通だったよな。

でも、たかがハチマキくらいで、んな緊張するか?


「……おまえだって俺に便乗して奈緒にやらせてただろ」

「いや、まさか本当にやってくれると思わなかったし。

でも頼んでみるもんだなー。

俺、今日絶対ハチマキ結び直さない」


嬉しそうに話す武史に腹が立って……。


「いっ……て! 今度はなんだよ?!」


またしても蹴り上げられた武史が、腰をさすりながら言う。


「……おまえがうるせぇから、むかついたんだよ」

「あれ? 亮、やきもち? 意外と独占欲強いんだな」

「……」