イジワルな恋人



日に日に増える噂は俺自身の耳に届くほど。

どんどんエスカレートしていくそれは、完全に一人歩きを始めていた。


……結局は周りに自慢できる立場でいたいって事か。

俺を使って、金と、自慢できる男を手に入れようって魂胆だろ。

……欲深ぇな、女って。

まぁ、その女を利用してる俺が言うことでもねぇけど。

現に遊びで付き合った女が校内だけでも20人を超える。

女をバカにしながらも、どこかで嫌いになりきれない自分に気付いて、ため息をつく。



――あいつ、水谷 奈緒とか言ったっけ。

ふと、昼休みに見た女の顔が浮かんで、さっきまでバラバラに散っていた思考が集中する。

あんな外見して何一つ不自由なく過ごしてそうな女でも、俺が金持ちって知ったら言い寄ってくんのかな……。

他の女みたいに、俺に媚び売ったりすんのか? 


……想像できねぇけど。


……―――試してみるか。

ガキの頃以来の悪巧み。

思い浮かべた企みに、思わず笑みが零れた。


下校する生徒達の話し声が響く放課後、俺は校門に止めた車の中で女を待ち伏せた。