イジワルな恋人



【亮SIDE】


「亮、奈緒ちゃんいるよ」


武史が2コーナーを指差して言う。


「やっぱかわいいなぁ。

……ぶっちゃけどこまでいってんの?」


ニヤつく武史を無視して、奈緒に視線を固定する。


視線の先で、奈緒は友達と何か話しているようだった。

……クラスでもあの女と一緒にいるよなぁ。仲いいんだな。

昼に言ってた『梓』とかいう女か。


なんとなく奈緒の様子を眺めていると、奈緒が急にしゃがみ込んだ。


「……―――っ」


一瞬、貧血でも起こしたのかと思って、奈緒に向かって走り出しそうになった足を止める。


……なんだ、靴ひもか。

おどろかせんなよ。


奈緒の顔色はまだ悪くて、その事が俺の心配を煽っていた。


……だせぇ。


そう思って、奈緒から視線を外して冷静になるよう意識する。

最近、あいつのことになるといつも…………―――!!?


再び奈緒に視線を戻した時だった。

ゆっくり倒れていくの奈緒の姿が、俺の目に飛び込んできた。


「……―――っ!」


走り出そうとした瞬間、俺の横を走りぬける男の姿があって―――……。


「奈緒!!」




駆け寄って、奈緒を抱き上げたのは……賀川だった。