イジワルな恋人



「何の話?」


梓は少し黙った後、言いづらそうに口を開く。


「……奈緒は、

川口の事があってから恋愛はしないって言い張ってたから……」




―――……ドクンッ!




『川口』


その名前を聞いた瞬間、心臓が大きく波打つのがわかった。



ドクン……ドクン…ドクン―――……。


どんどん速くなる心音に、呼吸ができなくなる。




「桜木先輩との事聞いた時は意外だったけど……、今の奈緒見てればうまくいってるのはわかるし、本当によか……奈緒?」



梓の声が、遠くに聞こえる……。


意識が遠のく……。




……やっぱりバイト入れすぎたかな。



冷静にそんなことを思って……、



記憶が途切れた―――……。