イジワルな恋人



「集合ー!!」


真ちゃんの大声で叫ぶ声が、午後の第2グランドに響いた。

三学年の生徒達がゾロゾロと真ちゃんの前に集まる。

真ちゃんの指示で、4コーナーに別れてチーム別に練習が始まった。

2コーナーから見渡すと、3コーナーに亮の姿を見つけた。


「久しぶりに見たけど、やっぱり桜木先輩かっこいいなぁ……」


隣いる梓が、亮を見ながら言う。

2コーナーには15人程度の生徒が集まっていた。

練習は1チームずつしかできないから、練習時間よりも待ち時間の方が多くて、生徒はしゃべりたい放題。


梓につられて、あたしも亮に視線を向ける。

50メートルくらい先にいる亮は、ジャージを少しだらしなく着て、見るからにだるそうに立っていた。


他の男子より少し飛び出た頭に、茶色の髪。いつもは不機嫌そうだけど、笑うとやんちゃな顔……。

あたしにしか、見せない顔……。



「何自分の彼氏に見とれてんのー?」


梓の言葉に、あたしはムっとしながら反論する。


「違うよ。梓があんまりカッコいいって騒ぐから……」


照れ隠しみたいに言ってから、靴紐を結び直し始めると、あたしをじっと見ていた梓が微笑む。


「……うん。でもよかったよ」


さっきとは違うトーンで話す梓に、あたしはしゃがんだまま聞き返した。