イジワルな恋人



【亮SIDE】


「うん、まぁ。普通に好きだよ」


それは特別な感情のこもった『好き』には聞こえなかった。

……けど、奈緒が他の男を好きだとか言う事自体が気に入らなくて、奈緒を試すために聞いた自分を後悔する。


「……―――ったく」


らしくねぇ自分が情けなくて、思わずそんな言葉が口を割って出た。


「……なに?」

「……作りすぎなんだよ」


3つ目のハンバーガーの包み紙をくしゃくしゃに丸めて放り投げる。


「だから、無理して食べなくていいって言ったじゃん。

なんか変だよ、亮」

「……仕方ねぇだろ」


『奈緒の作ったモンを他の男に食べさせたくない』

なんて、らしくねぇ感情が浮かんだんだから。


自分らしくもない感情ばかりが浮かんで、戸惑いと苛立ちが同時に湧き上がる。


「亮? 大丈夫?」


何も言わずに寝転がっている俺を、奈緒が覗き込んだ。

雲の多い空と奈緒の顔が、俺の視界を塞ぐ。


そんな景色をしばらく見た後……奈緒の顔色に、身体を起こした。


「……おまえ顔色悪くねぇ?」


……今までなんで気づかなかった?


そう不思議に思うほど悪い奈緒の顔色に、眉を潜める。