イジワルな恋人



「だから、食べないの?って聞いたの。もしかしてハンバーガー嫌い?」

「……食うよ」


持っていた奈緒特製のハンバーガーを口に運ぶ。


「おいしい?」


食べてすぐに聞いてきた奈緒に、笑みを浮かべてから答える。


「うまいよ」


その答えに、奈緒は満面の笑顔を浮かべる。


そんな奈緒の姿に、自然と奈緒を『可愛い』と思う感情が湧き上がる。

思わず抱きしめたくなって、奈緒を抱き寄せようと手を伸ばそうとして―――……。


そんな自分を止める。


それは、『怖がらせたくない』っていう気持ちと、『嫌われたくない』っていう、二つの気持ちからだった。


奈緒に伸ばしかけた手を地面に落として握りしめる。


……俺、こいつに惚れてんのかな。


不意に浮かんできた感情に困惑して、頭をかきながら奈緒に視線を向ける。


俺の視線に気付くと、奈緒が笑顔を返した。



その笑顔に、俺は握った拳に力をこめた。