イジワルな恋人




「……別に仲いい訳じゃねぇと思うけど」


……知らねぇけど。


「ふぅん。亮がそう言うんならそうなんだな。

見た瞬間は教師と生徒の熱愛かと思ってドキドキしたんだけど。

禁断って言えば、保健医のさー……」


武史が笑いながら話す声が耳をすり抜ける。


さっきの武史の言葉が、なかなか頭から離れようとしなかった。


……賀川は確かに生徒に人気だし、中には本気の女もいるみてぇだけど。

だけど、奈緒はそんな素振りは一つも見せなかったし。

第一、男が苦手のハズだし。

ありえねぇよな。


そう区切りをつけた思考に、不意に奈緒のケータイの裏に貼ってあったプリクラが蘇る。


見覚えがあると思った男。


思い出した人物に、俺は言葉を失った。





……―――賀川。


なんで、あいつと……。



ありえないはずの二人の笑顔に、力の抜けた手を握り締めた。