イジワルな恋人



……確かにカッコいい顔はしてたかもしれないけど。

いくら顔がよくても、中身が軽い男なんて全然カッコよくない。

……なんて、とてもじゃないけど、梓には言えないけど。


中学を境に、……ある事を境に、男の人が苦手になった。


自分に好意を持ってる男の人はなおさら。怖いって思う事も多い。

あたしがぼんやりと眺める先では、まだ梓が桜木先輩の話をしていて、そんな梓に笑みが零れる。


……あたしもいつか誰かに憧れたり、好きになったりするのかな。

一瞬、そんな事を考えてしまった自分に気付いて、胸がちくんと痛くなった。


「ね、奈緒はどう思う?」


突然振られた話題に、聞いてなかったとは言えないあたしは、また曖昧に笑う事しかできなかった。