「……奈緒も?」


幻想的な中庭にすっかり見とれていたあたしは、亮の言葉に振り向いた。


「え……?」


視線を移すと、真剣な表情で見つめてくる亮が目の前にいて。

目を逸らさない亮に、あたしは動けなかった。

金縛りにでもかかったように、身体が動かない。


そんな中騒ぎ出した鼓動に動揺しながら、ただただ、亮を見つめていた。


二人の時間が止まったみたいだった―――……。



「……―――あたしは、」


ようやく口を開いた時、ちょうど料理が運ばれてきた。


「失礼いたします」


ウエイターが料理をテーブルに置いて、一礼して離れる。

タイミングの悪さにうつむいていたあたしが、話を切り出そうとした時、先に亮が口を開いた。


「冗談だよ。ほら、冷めないうちに食え」


亮が優しい顔をして言う。


「……うん」


亮に促されて、メインの肉料理を口に運ぶ。


目の前の亮を見ると、亮の視線はまだあたしに向けられていて……。

あたしは顔を赤くしてうつむいた。


さっきの亮の言葉が頭から離れなくて……、そこからの料理の味はよくわからなかった。