「ああ、ケータイ買ってきたんだ」


そう言って、見せてきたのは、買ったばかりのケータイ……のハズなのに。


「あれ、あたしのと色違い? なんで?

もっと新しい機種あったでしょ?」


不思議に思って聞くと、亮が困り顔で微笑む。


「おまえこそもっと新しいのに変えろよ。探すのに手間取るだろ」


亮の言葉の意味が分からなくて首を傾げるあたしに、亮はケータイを渡してくる。


「お前の番号登録しとけ。同じ機種ならすぐ出来るだろ」


それだけ言うと亮はそっぽを向く。

……それだけのために?

だって……そんなの他の機種だって登録くらいすぐにできるのに。

あたしが使いやすいからって、それだけで……?


少しの間呆然としていたあたしは、亮の横顔に笑顔を向ける。


「……すぐ登録しちゃうね」


たったそれだけの亮の行動に、胸の中のイライラがいつの間にか消えていた。


「おまえのにも入れとけよ。俺の番号。

……なんかあったらすぐ連絡よこせ」


そう言う亮の態度はいつも通り偉そうで。

あたしは少し呆れながらも亮の言葉に笑みをこぼした。