「ちょっとっ……迷惑ですから!」

「いいじゃん。バイトしてるってことは金が必要なんでしょ? 俺、協力……」


あたしを引き寄せながら言う男が、途中で言葉を切った。

不思議に思って男を見ると、その視線はあたしの頭の上で止まっていて……あたしもつられて上を見上げる。


「……あ、」


あたしと男の視線を受けながらニヤリと笑みを浮かべたのは……。


「……わりぃけどもう売約済み。他当たれよ」


悪戯な笑みをこぼしながら、ブラックカードをチラつかせる亮の姿があった。

……あたしの頭の上で。

あたしが、初めて見たブラックカードに釘付けになっている隣で、男は何も言えずに背中を向けて離れて行く。


「……おまえ、なんで男が苦手なのにいっつも触られてんだよ」


亮がお財布にカードを入れながらため息をつく。


「そんなのあたしのせいじゃないもん……」


亮の顔を見ると……、さっきまで感じてたイライラがまた襲ってくる。


「亮、なんでこんな所にいるの?」


亮が悪いんじゃないことは分かってるのに。

どうしても気持ちが収まらなくて、少し口を尖らせながら聞いた。