イジワルな恋人



なんでこんなにイライラするんだろ……。


……亮が遊び人だってことは、前から知ってたのに。

女を使い捨てするような、女の敵だって。

あたしだってずっとそう思ってたのに……。


……それでも条件につられて付き合うフリを約束した自分もどうかと思うけど。

だけど、おかげで呼び出しはすっかりなくなったし。それに……。


亮、最近はなんか優しかったから。

本当は噂なんか嘘で、そんな人じゃないかもしれないって思ってたから。

一緒にいて、そう感じてたから。


だからなんか……ちょっとだけショックで……。


また一つため息がもれる。


「ティッシュください」


聞こえてきた声に慌てて顔をあげて、ティッシュを差し出すと、手ごと掴まれた。

……というよりは握られた。


「……、あの?」


目の前にいるのは、いかにもホストでもやってそうな雰囲気の若い男の人だった。

掴まれた手に警戒を示すあたしに、男が笑いかける。


「お小遣い欲しくない? キミなら5万とか……もっと出すよ」

……キャッチ? ……援交?


どっちにしても迷惑な事には変わらないけど。


「そういうの興味ないですから」


男から目を逸らして冷たく言う。

手を振り払おうとしたけど、なかなか離してくれない。