イジワルな恋人



【奈緒SIDE】


階段を下りながらも、まだイライラが胸に詰まっていた。


……あたし、何怒ってるんだろう。


亮が他の子と色々遊んでたことは噂で知ってたし、初めて会った時だって女の子といたし……。

それを承知で付き合う約束をしたのに。

それに、第一あたしと亮はそんな関係じゃ……ない。

のに……、頭にくる。



「水谷」

少しカリカリしながら廊下を歩いていると、後ろから呼び止められた。

振り返った先には真ちゃんの姿があって。


「し……賀川先生」


思わず呼び方を間違えそうになった口を押さえる。


「こないだ見たんだけど、おまえ喫茶店でもバイトしてるのか?」


珍しく真面目な真ちゃんの顔に、あたしはコクンと頷く。


「あ、うん。してるよ」


横を通り過ぎる他の生徒に気を配りながら、真ちゃん真剣な表情を向ける。


「俺が出しゃばって言うことじゃないけど……、おまえの両親も……健だって、誰もおまえを責めてなんかいないよ。

だからそんなに頑張らなくたって、」

「やだ、賀川先生。そういうのうざい先生って言うんだよ?」

「水谷」