電灯の周りを蛾が舞っている。電灯に向かって一心不乱に身を焦がしながら。辺りは真っ暗になっていた。中庭内外の街灯に照らしだされた蛾は果たして本物なのだろうか。あたしの目に映っている世界ですら果たして本物なのだろうか。世界数秒前創造説という哲学の仮説がある。誰も否定はできない。存在の根拠など誰しも証明できないだろう…。 目を覚ませ!!江藤香!!!…江藤香…!!江藤香…!!… あたしは自分の名前を心の中で連呼して、冷静さを保つことに必死だった… 今はそんなことを考えている場合ではないだろう…!!



