すでに日が暮れていた。蛾が病院敷地内の中庭、内外の電灯に身を焦がしながら右往左往している。バチバチという身が焦げる音が聞こえる。身が焦げているのか、それとも羽が焦げているのか。どちらかは、あたしには分からない。蛾が舞っているのは目に映るが、そこに本当に蛾がいるのかまでは、この世の誰もが分からないだろう。目に映る物事は事実か?と問われれば既存の世間体を貫く為に誰もが事実と答えるだけだ。しかしこのベンチに座っている兵藤の光景は異常だ。兵藤が異常なのか?本当にそうなのか…?
あたしは茫然としながらもそのまま隠れて様子を見ていた…
あたしは茫然としながらもそのまま隠れて様子を見ていた…



