クレイジーチェリー

竹中や病院内幹部の人間から兵藤についての詳しい話を聞き出したいと思ったからだ。プログレッシブロックバンド、スクランブル・サイドカーのアサイラム・イン・ザ・ナイトの着信音が作業室近くのトイレから聞こえた。おそらく兵藤のケータイが鳴ったのだ。急いでトイレに向かった。扉の前で耳をすました。恐怖で中に入る勇気がない。ひそひそと声が聞こえた。
「北村?」
「うん…」
「どないしたん?何か用事?」