クレイジーチェリー

兵藤の病室では一体何があるのだろう。畏怖の寒さを感じた。巨大な何かに踊らされている気がした。巨大な権力に監視されている気がした。反省会が終わると、いつの間にか兵藤はいなくなっていた。おそらく作業員患者たちが騒ぎ出した隙を見てさっさと帰ったのだろう。あたしは兵頭の担当看護師ではないが、白く、か細い左手首のリストカットが気になった。同僚の兵頭の担当看護師である佐々木信子に彼女のiPhoneに、かけてもらうように頼んだ。
勿論病院内でのiPhone使用は規則で禁止されている。だが、電話をかけることによって、イケメン担当医師の