「だからさ、俺、毎年ここに来る度親父とお袋に誓ってんだよ。
『ぜってぇ負けない』ってな。
困難上等、壁上等。何気に俺のモットー『腹の底から笑う』だし?って、そんなイメージないか」


そう言って、今日一番の笑顔であたしを振り返った。


ううん、蔵島恭平と出会ってから一番かもしれない。


彼の怖いイメージをぶち壊す程の、無邪気な笑顔。


あたしだけが見るのはもったいない。


学校でも笑っていてほしい。


あたしは、彼の大きな背中を見ながら、ただそれだけを願っていた。









「いてっ!」


帰り道。


隣を歩く彼が、突然顔を歪めた。


「どうしたの?」


びっくりして、彼の顔を覗き込む。


頬を押さえて、舌で口の中を確認しているみたいだった。