「なんか今日、気合い入ってるなぁ」

「そりゃそうだろ。追悼暴走だからな」

「追悼……?誰か死んだのか?」



隣りで話し始めた若者の声に、耳をそばだてる。

目の前を走り抜けた暴走族。

派手な車に乗っている男の子の悲しげな表情が目に付いて離れなかった。



「誰が死んだのかなんて分かんねぇけど……。今朝、一ツ瀬峠で事故があってさ」

「あー知ってる。峠に車ごと落ちたんだろ?」

「そうそう。その車の持ち主、あいつらの仲間だったみたいだぜ?」



一ツ瀬峠で事故……。

テレビなんて見ていなかったから初めて知った。


まさか……まさか……。

永輝じゃないよね?


解約された携帯。会えなくなった永輝。

永輝と峠での事故が無関係であることを確かめる方法がなかった。