君に手紙を書くのは、これが二度目ですね。

最初の手紙、君は憶えてますか?

僕は、今でもはっきりと憶えてます。

思い出すと、すごく恥ずかしくなります。

クラス中の子が見ている前で、君に二つ折りにした手紙を差し出すと、困惑した表情を浮かべてましたね。

手を伸ばそうか伸ばすまいか……

横に居た君の友人が、僕から引き離すように引っ張って行くと、君はそのまま放課後の校庭に消えた行きました。

僕の手に残った手紙。

それは、ノートを破いて書いた手紙でした。

ロマンチックのかけらもありませんでしたね。

背中を叩く同級生達は口々に、

「ご愁傷様。」

「次があるさ。」

などと、無責任な慰めを言っては笑ったのでした。


その日以来、君は僕とすれ違う度に目を逸らすようになり、僕は完全にフラれたと思いました。

フラれるも何も、本当はまだ何も伝えてなかったんですよね。

夏休みが過ぎ、二学期も終わり、高校受験で何かと忙しい空気が漂っていた頃。

僕は、学校を一ヶ月ばかり休みました。

実は、あの時家出してたんです。

理由は別にありませんでした。

訳も無く家を出たかっただけでした。


学校に久し振りに戻ってみると、以前と少しクラスの空気が変わったように感じてたんです。

直ぐに理由が判りました。

君の席が空いたままになっていた事に気付いたんです。

同級生に聞くと、一週間前に引っ越したと言う。

それから三ヶ月。

卒業。

進学。

就職。

同級生の大半は家庭を持つ中、僕はまだ、何を夢として生きて行けば良いのか判らないままでいました。

そんな時、何気にスイッチを入れたテレビに君の姿を見たのです。

それは、下半身麻痺になった君の闘病生活を取り上げたドキュメンタリ番組でした。

僕は、僕は何をどう言葉にしていいのか判らないまま、画面に釘付けになっていました。

暫く君の姿が消えませんでした。

インタビューでの一言が、何時までも残っていました。

将来の夢は?

お嫁さん……


僕は今、二度目のラブレターを書いています。

今度は、ちゃんと便箋に……