カッちゃんへ

突然、居なくなってごめんね。

ちゃんとサヨナラを言いたかったけれど、カッちゃんの顔を見たら言えなかった。

だから、手紙にします。

ありがとう。

本当にありがとう。

もえの事をそんなに思っていてくれたなんて。

でもね、もえはカッちゃんと一緒になれない。

好きという気持ちだけで、ずっと一緒に居る事は無理なんだよ。

大丈夫ってカッちゃんは言ってくたけど、あたし、カッちゃんの子供を産めないのよ。

もえは、病気で赤ちゃんは作れないの。

それが、どういう意味か判る?

産めないだけじゃないんだよ。

エッチも出来ないんだよ。

そんなあたしが、カッちゃんを幸福にして上げられる訳無いでしょ?

病気の直接の原因が、もえの仕事のせいでは無いにしても、やっぱり気持ち的には仕事のせいにしたくなる。

神様があたしに罰を与えたとしたら、残酷過ぎるけど……

カッちゃん、だから判って下さい。

カッちゃんの気持ちは、本当に嬉しいし、カッちゃんを好きになった事も後悔してないよ。

それ以上に、カッちゃんのような人から、いっぱい愛を貰えて、あたしは本当に幸福でした。



一年前、ここまで書いた手紙ですが、結局、出せずにいました。

あみちゃんから聞きました。

カッちゃんが、今でももえの事を好きでいてくれてるって……

いけない、そう思って、続きを書く事にします。

今度はちゃんと伝えなきゃいけないから。

もえの病気は、子宮のガンです。

他にも転移し始め、明日、二度目の入院をします。

発見がもう少し早かったらと、今でも後悔してます。

ねえカッちゃん、カッちゃんは、もえをもえとしか知らないんだよ。

お店でのあたしは、もえという名前の別な女の子。

本当の名前も、歳も、そして病気の事もカッちゃんには隠してた。

隠し事ばかりで、本当のあたしをカッちゃんは知らない。

少しも本当のあたしを見せてなかったけれど、カッちゃんを好きだった事は、嘘じゃなかったんだよ。

じゃあ、今度こそちゃんと言います。

サヨナラ。


もえという名前を持つ紗耶香より。