紗耶香、あれから一年になりますね。

僕の誕生日プレゼントに貰ったサボテンは、まだ花を咲かせてません。

白い花が咲くんだよと言ってくれましたが、一年前と同じ姿で机の上に居ます。

紗耶香との初めての出逢いは、ちょっと普通ではありませんでした。

その事がずっと尾を引いてか、君はなかなか本当の心を打ち明けてはくれませんでしたね。

それとも、これは僕の思い過ごしですか?

「私は汚れた女だから…貴方を幸福にはして上げられない。」

今でもその言葉を忘れません。

君は汚れた女と言いました。

確かに、人によっては、君の職業を知ったらそう思うかも知れません。

親にも、親友にも知られたくない仕事……

けれど、それを言うならば、僕は君のお客でした。

その僕が、紗耶香のすべてを承知した上で、君の全てを受け入れようと……

一度は、君もその事を喜んでくれたのに、ある日突然、目の前から去ってしまいました。

初めて祝ってくれた僕の誕生日の翌日に……

君は、あの店も辞めてました。

店の人とかに、いろいろ聞いたのですが、辞めた理由は知らないと言われるばかり。

その中で、一番仲が良かったという女の子に、君が病気になっていると知らされました。

どうして僕には言ってくれなかったのですか?

僕の想いを、紗耶香は判っていてくれたのではないのですか?

紗耶香、どうして君は何時も自分から幸福を放棄するんだい?

この一年、僕はずっとそうやって君を責め続けてました。

自分は少しも悪くないと思っていて……

やっと気付いたんです。

僕は、誰よりも君を理解していたと思い上がってました。

僕の気持ちは未来永劫揺るぎ無いものと、傲慢な心で君に接していたんです。

それが、君には寧ろ大きな不安に感じられたのでしょう。

先日、君の親友から聞きました。

今でも定期的に病院へ通っている事を。

そして、その病名も。

大丈夫、絶対に大丈夫だから。

だから、このサボテンに花が咲くのを一緒に見よう。