今朝、久し振りにあなたを見ました。

わたしの二段上で微笑むあなたを。


中学三年の時に、あなたと同じクラスになりました。

勉強が特別出来る優等生ではなく、かといって、不良っぽいといった訳ではないあなたは、他の男子とは少し違う存在感を持っていました。

わたしには、それが大人びた雰囲気に感じられました。

あなたに興味を持ち始めた事を、自分では意識してませんでした。

恋とか、そういう事に、その頃のわたしは奥手でしたから。

男の子を好きになるという感覚が、判っていなかったわたしですから、それが初恋だと気付かなかったのです。

でも、あなたがビートルズの大ファンで、マラソンが速くて、国語と歴史が良く出来て、けれど、英語と数学が苦手だった事は知っていました。

難しい小説を読んでいた事も知ってました。

そして、あなたがクラスのある女の子を好きだった事も。

一番の思い出……

クラス対抗の百人一首大会。

国語の先生が、百人一首は高校の古文に役に立つからと、それで大会迄催したのですが、あなたとチームになれた時はすごく嬉しかったんですよ。

大会迄の練習を毎日放課後に教室でやってた時は、楽しくて楽しくて。

わたし達のチームが決勝へ勝ち上がり、最後の一枚をあなたが物凄い速さで取った時、みんなで手を取り合って喜びました。

その時、初めてあなたの手に触れました。

あなたは憶えてないでしょうね。

卒業後、みんなが高校進学する中、あなただけは就職の道を選びました。

特に目的も無く、親や教師達に決められたレールに、ただ乗るだけのわたしは、そんなあなたがすごく大人に見えました。

高校、大学と進んで行くうち、回りの友達は彼氏とか出来たりしてましたが、わたしはそういう事に縁がありませんでした。

その事で、仲の良かった女の子に、好きになった男の子はいなかったの?と聞かれ、突然、あなたの顔が浮かんだんです。

ちょっと、驚きました。

ひょっとして、自分で気付いてなかったのかな……

何年振りかで手にしたアルバム。

あなたの顔を見て、判りました。

わたし、あなたが好きでした。

そして、この手紙を書いてます。