-恐怖夜話-


こつ、こつ、こつ。


そのスピードは一定で、遅くも速くもない。


ただ、近付いてくる。


確実に、女は近づいて来ていた。


白っぽいフレアスカートの裾が女の青白い足に絡まりながら、ひらひらと波打ち、ウェーブの掛かった長い髪が、足を踏み出すたびにふわふわと、軽やかに舞い踊る。


やがて、車のライトに照らし出された女の顔の輪郭が、くっきりと浮かび上がった。


『笑っている』。


表情は見えないはずのに、何故かそう確信した。