「今の、見た?」 思わず声が裏返る。 「え? なぁに?」 こりゃ、見てないんだな。 「ううん。何でもないよ。それより、お買い物に行くんだから、靴下履いて用意してね」 「うん!」 タンスが有る部屋に向かい、足取りも軽やかに駆けていく娘の背に「走らないの」と声を掛け、私はテレビの画面に恐る恐る視線を移した。