あれはそう、私が小学三年生のころのこと。


季節は初夏。


むせ返るような、暑い日だった。


時計はもう、夕方の六時を回っていただろうか。


私は居間のテレビで、毎週欠かさず見ているお気に入りのアニメを見ながら、ごろごろしていた。


台所からは、夕飯の煮物の甘じょっぱい良い匂いが漂って来て、食欲中枢を刺激しまくっている。


学校から帰って必ずおやつを食べるのだが、如何せん成長期の小学生の女の子。


夕ご飯までは、お腹の虫はペコペコになってしまうのだ。


――今日は、肉じゃがかぁ、早く食べたいなぁ。


美味しそうな匂いに、思わず、お腹の虫が『ぐうぐう』鳴ってしまう。


「ゆう! シロの散歩がまだだよ! 暗くなる前に行っといで!」


不意に台所から飛んできた母の叱咤するような声に、思わず『ギクリ』と体が固まった。