「大丈夫です! これでも着慣れてますから!」



嫌味に反論すると鼻で笑われたので、もう無視して茶の間を出る。


 
歩きながら、どうして浴衣だと現代人は歩きにくいって感覚がわかるんだっけ? と考えて。



そうか、あいつもジーンズ履いてたから違いを感じ取ったんだな、と思わず笑ってしまった。


 
玄関では茶色の台に朱色の鼻緒の下駄が待っている。



グラデーションにしたオレンジの爪を差し入れ、私はひとつ深呼吸をした。