ボソボソと呟くようにして言うと、あたしは歩く速度を速めた。 「なにっ? 分からないって」 「ちょっと梓! あんた何か隠してないっ?」 「……もうっ! あいつの話はやめてよーっ」 武人が、あたしにかまう理由……。 あたしはちゃんと分かっているし、しかも、それを言ってきたのは、武人だった。 そう……。 いま思い出しただけでも、本気で泣けてくる。 あれは、新学期の翌日の放課後。 場所は、生徒全員が帰ったあとの、あたしの教室……。 * * * *